アマプラで見たドラマ3本と映画3本の感想文。ネタバレ注意。

NUMBERS 天才数学者の事件ファイル
よくある一話完結型のFBIもので、FBI捜査官の兄ドンに天才数学家の弟チャーリーが協力して事件を解決していく作品。シーズン6で完結。

・正直なんちゃらの法則やなんちゃら理論で次の犯行現場が予測できるとかそういうのは理解できるようでできない部分が多く、いくら説明されても「いやそこまでわかるかあ??」と納得しきれないことも多かった。でもまあチャーリーができるっていうんならできるんだろう。よくわからんけど。
でも個人的にこの作品で一番好きなところは、FBIという殺伐になりがちな舞台なのにそこまでシリアスになりすぎない。問題をずるずるぐだぐだ引き摺らない。わかりやすいトラウマ救済お涙頂戴をやらない。一時的に揉めることはあっても全体的に人間関係が穏やかで、安心して観れるところだった。

・あくまでFBI捜査官なのは兄ドンの方で、弟チャーリーは基本的に大学を拠点にしていて同じ教授仲間との交流や日常がある。そのおかげで殺伐としたFBIパートに偏り過ぎず、殺人事件が起こっていても大学パートでのんびりできたんだと思う。まあ時間との勝負になる誘拐やテロ事件、身内が巻き込まれる系なんかはさすがにのんびりやってられないんだけど。

・あとこれは地味に凄いことだと思うんだけど、この作品過去回想シーンが一切ないんですよね。一番近いのはメーガンのフラッシュバックくらいか。
ドンの職場の捜査官達もだいたい重い過去を持っているのに、その回想にたっぷり一話使ってお涙頂戴、ということをやらない。過去を語ることはあっても口頭のみ。私はこういう無駄に湿っぽくならずさっぱりしている作風が単純に好みだったけど、ここまで徹底的に過去回想を排除するっていうのは何らかの意図があったりしたんだろうか。時間とは過ぎるだけで巻き戻ることはない的な。

・恋愛的にはチャーリーとアミタはずっと盤石で可愛かった。
最初こそギスってたけど、お互いに話すことがないなら数学のことだけ話してればいいじゃん!と気付いたら後はもう互いしかいないという感じで。
ドンの方は…良くも悪くもスクールカースト上位のリア充の恋愛ってこんな感じなのかなぁ…と思わせるような…。美男美女が同じ場所にいたら何となくいい雰囲気になってそのまま流れで、という感じで、リズにしろロビンにしろどっちでもいいのでは?と思ってしまう。
まあリズに関してはやっぱ同じ職場で上司と部下ってのがまずかったんだろうな。他のメンツが忙しなく働いてる時に隙間時間にイチャ…とされると私でもイラッとなった。でもコルビーとかに「ボスの女」とか茶化されるのは可哀そうだしそれで一度は出て行こうとするし、こういう時損するのはやっぱ女なんだな…と微妙な気持ちになった。

という気まずい流れを踏んでるのにちょいちょいリズは呼び戻されて結局また一緒に仕事するし、昇進のチャンスもふいにしてしまうしで、なんだかリズはドンというか脚本に振り回されてる感じがして可哀そうだった。いやこんな別れ方したのに「ここに家族がいるから」って元カレんちに戻ってくるかあ?そこまで家族ぐるみの付き合いだったっけ?

・…という感じで唯一リズの扱いだけは不満だしドンの恋愛はよくわからんかったけど、キャラは皆魅力的だった。
コルビーの命を救ったスパイの人は、もうあれなんだろうな…。いやホモ的な意味ではなく…。結局土壇場でコルビーはやっぱり正義の側だった、やっぱり自分は裏切られていたし薄汚いスパイは自分だけだったと分かったのに、それでもコルビーが危険に晒されたら迷わず助けに行く、イッツアラヴ….。

ゲスト系捜査官ではエジャートンの圧倒的強者感がカッコイイし絶対人気あるだろうなと思った。
あとシーズン6のUFO回で出てきた胡散臭すぎおじさんが、この終盤で強烈な存在感を残していてすごいと思った。このおじさんもっと観たかった…。

大学教授仲間達も皆キャラが濃くて好き。その筆頭のラリーは最初は頼りないおじさんかと思いきや、最終的には掴みどころがなく雲のようにふわふわしてるけどなんか助けてくれる不思議なおじさんと化していた。仙人と言った方が近いかもしれない。ラリーとメーガンは見た目も境遇も全然違いながらお互いがお互いに癒されてる感じのとてもかわいいカップルだったのに、まじであれで終わりなの?悲しい…。

ゴースト ボタン・ハウスの幽霊たち
あらゆる時代の幽霊が楽しく(?)暮らすお屋敷に、イマドキの若夫婦がやってきた。屋敷をホテルに改築したい夫婦とそれを阻止したい曲者ぞろいのゴースト達の攻防戦やら交流やらそういう感じのコメディ。シーズン1全6話で既に綺麗にまとまってる感じはするけどこれからも続くのかな?

・見たまんまだけどとにかく登場人物全員のキャラが濃い。賑やかでやかましくて楽しい。
夫婦を敵視していた幽霊たちも徐々に絆されて…という定番の流れではあるけどそこはやっぱり曲者揃いで一筋縄ではいかない楽しさ。

・幽霊が見えるがゆえにアリソンが客人の前で変な振る舞いをしてしまい狂人のように見られる…という流れはこういう幽霊ものではお約束かもしれないけどやっぱちょっと可哀そうだった。でも旦那はアリソンの言うことを完全に受け入れて自分も幽霊に接しようとしてくれるのが救い。まあマイクはちょっとおバカだけど陽ないいやつ、って感じのキャラなんだろうな。勝手にローン組んだのはかなりのしくじりだけどそれは脚本の都合でそうなった感あるし。

・何故か地下に詰められていた異様な幽霊達を最初に出して、「なんか変だけどこの屋敷ではよくあることなんだろうな」、と視聴者に思わせておいてシーズンの最後で事実が明かすという構成も面白かった。
首無しギロチン男も1シーズンかけてようやく首と再会した、というオチになっていたけど、正直彼は出オチ&オチ担当だけでそれ以外の存在感がない…。確かに見た目のインパクトは随一だけど他キャラもたいがい変だし、全体を通すと完全に埋もれている。シーズン2の活躍に期待。

個人的には戦争映画大好きな軍服男が可愛かった。
ロマンチックな詩人は幽霊としてはいつかガチで殺しにかかってきそうで怖いけど、いかにもあのへんの時代!って感じの雰囲気が面白かった。なんか喋り方とか雰囲気が「モース」っぽいんだよね…

アップロード~デジタルなあの世へようこそ
死ぬ前に脳のデータを仮想世界にアップロードすることで、死後もデジタルな世界(天国)で生きられるようになり生者と交流もできる世界観のSF。今アマプラにあるのはシーズン1だけ。
現物の脳は消滅してるならそれ厳密には本人のクローンなのでは?とは思ったが、なんかもうこの世界ではアップロード=本人って感じになってるのでそこは深く考えてない。

・「仮想世界にありがちなこと」ネタがふんだんに盛り込まれていて全体的にコミカル。
でもネイサンは何故殺されたのか?という謎がずっと根底にあって続きが気になる作りになっているし、制御できなくなった機械の怖ろしさや緊張感も程よくある。

・ネイサンとノラの恋はうまくいってほしいとは思ってるけど、一見悪女ポジに見えるイングリットもかなり気になる存在。
イケメン彼ピを金の力で自分のものにした我儘セレブお嬢様かと思いきや、家族は彼女以上に嫌味だしネイサンへの執着は本物のようだし…。ネイサンの姪に「髪形お揃いにしよう^^」と言い出した時は来たぞ!と身構えたけどイングリットがドレッドになっててお前が変えるんか~~~い!!となった。もしかしてイングリットいいやつなのでは…?

という感じで微妙にイングリットは株を上げてて、恋愛においてはむしろノラより誠実に見えてしまう。一途というより依存っぽい感じはするが…。
ノラは出会い方は最悪だったとはいえ、ちゃんと告白してくれた彼のことを終盤便利に使い始めたので、シーズン2からはそこもうちょっとちゃんとしてほしい。心から応援させてほしい。

ファーストラヴ
若い女性が父親を殺したのに「動機はそちらで見つけてください」とへらへらしている。彼女の過去と事件の真相とは!?という邦画。他のドラマを観てた時広告で流れたのが気になって観てきた。

・個人的にはサイコみ溢れる犯人カンナとその事件のことが気になっていたので、ぶっちゃけ探偵役(ユキ)の過去のトラウマとか恋愛とか切ない三角関係とかどうでもよかった。完全にいらなかった。
タイトルのファーストラブも、カンナのことじゃないならユキと弟ってことになるけどそんなに強調することか…?という違和感。弟は特別ではあるけどそれをメインに据えたら兄の立場ないじゃん。
病院での理解のある旦那の台詞もどうでもいいのに長すぎるので途中で飛ばしてしまった。ユキは理解のあるイケメン兄弟に支えられたおかげでまともに社会生活を送れているし泣いてもヨシヨシしてもらえるけど、カンナは今この瞬間も拘置所で一人トラウマを抱えていると思うとカンナが不憫だなあという感想しか抱けなかった。

・カンナとユキのトラウマが、創作においては大したことじゃないというのはそれはそれでいいと思う。多感な時期の女の子は、大人が思ってる以上に傷付きやすいんだよ的な意味で。「目が怖い」というのは見られた側にしか分からない独特の恐怖だと思うし。が、捻りがなさすぎるのは話としてちょっとな…。
「動機はそちらで見つけてください」ってCMや紹介でバンバン流してるけど娘の親殺しの動機っつったら100人中99人が真っ先に思いつくのが虐待では?まさかそれをそのまんまお出ししてくるとは思わなかった。見つけてくださいも何もモロ見えでは?

・後細かいことで気になったのは、最初の家族写真で弟を笑わせるために兄がくすぐったこと。
なんだかいい話風にしてるけど「くすぐり(物理)」って子供がやることにしても安直すぎない?これも100人中99人が思いつくけどやるのはちょっと躊躇ったりもするよね、結局無理やりだから。いつだったかツイで「子供のころ大人にくすぐられて無理に笑わされるのが嫌だった」ってツイートがバズってたの思い出した。
娘を責めていた母親の腕にも傷が…っていうシーンも「悪役と思っていた人も実は辛い思いをしていた」って言いたいのはわかったけど、だから何?っていう。母親も辛かったんだよということだけを最後にぺろっと教えられてもじゃあ仕方ないねとはならない。いつどこで負った傷とかは全然わからないし、リスカの辛さを知っていたのに娘のことは責めることしかできなかったの?ってなるし。取って付けたようにありがちな含蓄を持たせるくらいならただの嫌な母親で終わってた方がよかった。

・…という感じで個人的には「いらない部分が多すぎる」「ひねりがなさすぎる」、かといって軽妙なやり取りや独特の雰囲気を楽しめるという作風でもないしでイマイチでした。

エクストリーム・ジョブ
ポンコツ麻薬捜査班が解散の危機に立たされる。なりふり構っていられなくなった彼らは潜入捜査としてチキン屋を始めるが何故か繁盛してしまう…というあらすじが既に面白い韓国映画。

・最初のブランコ突入劇の時点で笑えるんだけど、「普通ならこういう感じだろ!?」と「かっこいい突入の様子」も流れるのでここでただのおふざけコメディではないと分かる。しかし終盤までだいたいふざけている。

・個人的に韓国人名に慣れていないのもあって人物名が全然覚えられず、麻薬組織が具体的に何やってんのかはよく分かってなかったんだけど、チキン屋チームのやり取りは普通に面白いので全然問題なかった。警察署内ではポンコツ扱いでも、一介のチキン屋としては並み以上の捜査スキルを駆使して問題解決にあたっていくギャップが面白い。

・最終的にチキン屋チームは実は粒ぞろいの脳筋チームだと判明したけど(野球部最強)、だったらわりと真面目に署長の采配が問題だった気が…。武闘派チーム作るのはいいけど何故麻薬捜査班にした…強行班とチェンジでいいじゃん…マが署長とか先行き不安でしかないがまあ皆出世できてよかったね…。

・こういう全編ギャグみたいな作品を観ることはあんまりないので楽しかった。
あと中韓の映画ってなんか汚い・不潔な描写が多いイメージあるけどこの作品ではそういう要素がなかったのも良かったかな。

アサイラム  監禁病棟と顔のない患者たち
学生エドワードは精神科医としての経験を積むべく山の上に隔離された精神病棟に赴く。しかしその病棟ではちょうど今水面下で大変なことが起こっていて…という話。

・「狂人」の概念が今よりも曖昧で偏見に溢れていて、非人道的な治療がまかり通っていた時代、隔離された環境という舞台設定や構図が面白かった。
こういう精神病棟もの?ではだいたい「本当に狂っているのは誰か」というのが常に疑わしくなるし主人公も例外ではない。むしろ実は狂ってるのは主人公でした系のオチはド定番といえる。
この作品の場合、わりと序盤に「本当に狂ってるのは実はこの人達です」というのが明かされ、「病棟ジャックした患者たちVS孤軍奮闘する主人公」という騙し合いのゲームのような様相を醸し出してくる。普通ならそこでも「本当にことを言っているのか?」と延々疑ってしまうんだけど、各陣営の言動や反応が合致してるのでわりとすんなり信じられる。

精神病棟ものだけど、「誰を信じていいかわからない」タイプの不安では視聴者を煽って来ないんですよね。普通に脅威と戦うスリラー映画的で、打倒すべき敵はクリアに見えている。…と思っていると最後に刺されるという感じ。いや知ってたけど!抜き身のナイフ持ってるの知ってたけどやっぱ刺すか~~こいつめ~~~!みたいな…。

・主人公の行動は確かに突飛で普通ではない。
でも名医と評価されているが患者を動物のように扱う医師や、精神病のレッテルを貼られてはいるが普通に会話できる患者、対応を間違わなければ健常者と変わらない患者を見てきた後なので、本物のエドワードの発言もどこまで本当かが分からない。主人公のことを「虚言癖」と言ってたけど、主人公の嘘は必要に迫られてついた嘘で辻褄もちゃんと合わせているし、嘘を吐いたことを申し訳なく思い最後には打ち明けているから、現代で言う虚言癖の特徴には当てはまらない。

精神病ものにありがちな夢か現か分からない幻聴幻覚、フラッシュバックなどの演出が起こらないことも主人公を信じてしまう要因ではあったんだけど、これは「健常者だから」なのか「真に病んでいる人間は自分が病んでいることに気付かないから」なのか。どちらとも解釈できるので結局主人公は狂っていたのかまともなのか、ということが最後まで分からないのが面白かった。
個人的には精神疾患とまではいかないが根っからの詐欺師という印象かな。舞台が違えば大物の詐欺師とか役者にもなれそうな感じ。

・多少のご都合主義はあったし、ラムを「治療しろ」とアドバイスを受けたのにトラウマ刺激しただけで最終的には悪化してんじゃんとは思った。いや彼の精神は今までずっと戦争時の混乱状態にあり、ようやく治療を受けられる状態に移ったということか…?
まあそんな感じで気になるところはあったけどだいたい面白かったです。

◆という感想文でした。